* * * * *
「最初は本当に一目惚れだったの…――でも、」
屋上にただひとり、ポツンと立つ彼女。
その背中は小さくて、どこか寂しげで…
「でも、負けない…負けたく、ない…」
そう呟く彼女の涙はもう引いていて――…
その瞳は儚いようで冷たいものだった。
* * * * *
「どうしたんだよ、辛気くせぇ顔してさ」
僕の前にある机のイスにドカッと座るヨウ。
返事、して来たんだろ?と、どこか遠慮がちに聞く。
「うん、だけど…」
なんだよ、と言いたげな瞳で僕を見る。
「いや、なんでもない」
なんとなく、一波乱起きそうな予感がしたんだ。
言葉に出すと本当に起きてしまいそうで、喋ることをなんとなく躊躇(ためら)ってしまった。