「ほら、肩濡れちゃうよ?もっとこっち来て」


瑠璃と恋人同士になってから初めて訪れる冬。



買い物からの帰り道、お店から出た時には…もう雪が降ってきていた。



ひとつの赤いかさに、ふたりで入って帰る。


恥ずかしがっているのか僕との隙間を開ける瑠璃。


瑠璃の肩が濡れないように繋いだ手を引っ張ってかさの中へと寄せる。


吐く息は真っ白なのに、かさを持つ手に時折触れる瑠璃の手はポカポカと温かい。


モコモコしたコートに、フワフワの耳当て。マフラーをぐるぐる巻いている瑠璃は服に着られちゃってるような…。




「…あっ、耳当ては凜久にしてあげる!」


ポスッとそれを外すと、僕の耳にはめた。



ジンジンと痛いくらいに冷えていた耳がポッと温かくなる。



「ふふっ、似合う似合う」


クスクス笑う瑠璃。



これからまた"僕"が"男"だって分かってもらう作戦なんか……大変そう。