「はい、ヨウくん。凜久は私と同じかさでいい?」
もう、ホントあの頃と変わらないんだから。
ふたりともいつもかさ、忘れるよね。
クスクス笑う瑠璃。
雨の中、かさに落ちる雨音を聞きながらいつもの道を帰る。
雨も少し弱まっていたせいか、かさに落ちる雫が優しい音を奏でていく。
まるであの頃に戻ったみたいだ。
"変わらない"そんな事を言った瑠璃だって変わってないんだよ。
迎えに来てくれた瑠璃の肩が濡れないように、少し瑠璃の方にかさを倒す。
「凜久が瑠璃に惚れる訳、すっげー分かる」
瑠璃に貸してもらったかさを差しながら、僕にそっと小さな声で耳打ちをしてくる。
「何々ッ?」
「なんでもねーよ。マジでかさありがとな」
ヨウは歯を出して笑った。
3人とも、中学の頃に戻ったみたいな――…時間が戻ってしまったような感覚を感じながら
家までの帰り道を出来るだけゆっくり、ゆっくり歩いて帰った。