「そんなに強がる必要って、あるのかな?」
「は?」
あたしは鞄から絆創膏を取り出した。
「ケンカは……
駄目だよ、痛いだけじゃん」
彼はとても温かい手をしていた。
「はい、出来たよ!」
彼に絆創膏を貼り終わり、ニコッと笑ってみせた。
「…意味わかんねえやつ」
「ねえ、早く帰んなきゃ風邪引くよ。ずぶ濡れじゃん!」
「それはお前もじゃね?」
彼が不意に見せた笑顔が妙に懐かしい気がして、涙が出そうになった。
「あ、あたしは別にいいの!」
精一杯の笑顔。
「ほら、貸してやる」
そう言うと、彼は折りたたみ傘をくれた。
「悪いよ、そう言えば……もう一人の男子は?」
さっきケンカしていた傷だらけの男子はいなかった。
「あっ、逃げられたじゃねぇか…」
「もう、やめなよ?」
「さぁな…」