他校の男子生徒は、傷だらけで地面に転がってる。



同じ制服に身を包む彼は全くの無傷で、傷だらけの男子をまだ蹴っていた。




あたしはその場から、何故か動けないでいた……




「もう終わりかよ…暇潰しにもならねぇ」




独り言のようにそう言うと、ソイツはあたしの存在に気ずいたようだった。




一瞬、時が止まった。






「なんだおまえ」



「………」


逃げた方がいいのかな?
でも何でだろう。


動けない。


怖いからとかじゃなく、
ただ放っておけなかった。




ねえ、なんであなたは――…



そんなに冷たい瞳をしてるの?





「なんだよお前、早く帰れば?」



彼はフッと鼻で嘲笑い、とても鋭い目であたしを睨む。




「怖くて声もでねぇの?」


怖くなんてなかった。




あれは冷たい瞳なんかじゃないの。



あたしは知ってる。


あれは……


悲しみに満ちた瞳なんだ。



あたし達のすぐ上から降っている筈の雨


なのに、どこか遠くで降っているかのようだった――……