「でも、名前で呼ばれるの嫌じゃなかったの?」

モカが不思議そうに聞く。

「あぁ。嫌だね」

当然、という顔で答える俺に、だったら!とモカが反抗する。


「……でも、モカは別」


女の子みたいな自分の名前が大嫌いだ。

名前で呼んでくる女子には容赦なく、呼ぶな、と睨み付ける。
サッカー部の仲間にも呼ばせてない。
…唯一聞かない裕太ぐらいだ。


でも、モカには、モカにだけは呼んで欲しい。あの甘い響きで呼ばれると、自分の名前が特別に思えて、好きになれる。