玲が近づいてくるのが
分かった。

一歩ずつ、一歩ずつ。

少し赤っぽいけれど
とても穏やかな表情だった。

玲の腕が上がって、
僕の手に触れようとする。

何故かそれが
すごく長い時間に思えた。

僕は思う。
人は大きくなるにつれて
人の温もりを直に
感じることが
少なくなっていくと。

小さいころの、
それは両親だったり、
友達だったり、
先生だったり、
近所の人だったり。

掌を通じて感じる
その人の温かさを、
いつも僕は恋しがっていた。

でも、今の僕の手は
その人たちよりも
大きくなり、貰う側から
与える側になった。

別の言い方なら
守られる側から守る側。