――― ― ―。

「玲?」

その声は少し
自信なさげに私を呼んだ。

少しまばらに
なってきたものの、
まだ下駄箱は
生徒で溢れかえってる。

神谷 玲は振り返ると
人混みの中の
彼を見つけた。

そう。このときは
まだ、貴方は居たの。

私の前に。
みんなの前に。

「灰二。」

貴方の名を呼ぶと
いつも顔が緩んでしまう。

昔からそう。

私はいつも
貴方の姿を探していた。

あのときも、あのときも。

今だってもしかしたら
そうかもしれない。

「玲はみんなと行かないの?」

灰二はそういうと
教室の方を指差した。

まだみんな残っているのだろう。