今更だけどなんで
あんなことを言い出したのか、
自分でも分からない。

後ろに
差し出している右手を、
湿気の混じった南風が
撫でていく。

顔は今も俯いたままだ。

熱でもあるのかと
思うくらい顔が熱い。

なんでこんなことに
なったのかというと、
玲の一言だった。

「昔なんか、
手繋いだりしたよね。」

きっとそうだ。

熱が出ていて、
意識が朦朧としていて
おまけに頭が
イカれていなければ
こんなこと僕が
言えるはずない。

よく考えたら僕は
朝から体がだるくて
仕方がなかったんだ。

夏風邪でも
ひいているんだろう。

だから言えたんだ。

”久しぶりにさ、繋いでみる?”