無論、当夜の一の君には、その若者が主上そのひとであるなどとは思いもよらぬことにございましたが、この高貴なるお方が、姉姫にひとかたならぬご好意をお寄せでいらっしゃることは幼きなかにも悟られておいででした。

ちょうど、一の君が、姉姫へのあつき御思いを自覚し始めたころにございます。