こんにちは、バカップルです。

ってなわけで、さっさと美優をどうにかしてやろう。



少しでも金を稼ぎたい美優は当たり前のようにモデルになることを決意した。



「芯、美容室連れてって、メイクのしかた習わせて。で、あいつには高飛車な感じで仕事させる」

「そんな感じじゃなくない?なにげに恥ずかしがり屋っぽいよ?」

「俺が負けないための方法」



3日後、芯の家まで美優を迎えに行った。



対決は今日から。



俺と撮る美優は朝からガチガチに緊張…。



「あたしも着いてっていい?」

「ん~、口出さないならいいよ。妬くなよ、俺のやり方に」

「妬かない!!」



気になりすぎてる芯も一緒に連れて来た。



先に来てたイツキは背の高い20歳の女。



かなりの美人…。



「久しぶりココ」

「おいっ。まず俺に挨拶だろイツキ」

「相変わらず偉そうなガキだな。そう言ってられんのも今だけだから…おはようございます、ツカサさん」



嫌みったらしい…。



そうやって余裕ぶっこいてりゃいい。



勝つのはイツキじゃなくて俺だ。



自分から挑んだ戦いに負ける情けないイツキ…。



楽しみだな。



「司…」

「そんな顔してんじゃねぇよ美優」

「なんかいつもの司じゃない」

「仕事は真面目にやってんの。いいか?俺の言うこと聞いてりゃいい」

「うん、わかった!!」

「そして、絶対怯むな」

「了解です!!」



さてと、着替えますか。



いつも大人っぽい服ばっかり着てる俺。



でも今日は美優に合わせてみた。



美優の服も俺が選んだカワイイ系で。



「いつものツカサじゃない……」

「どんな服も似合っちゃう俺って怖いくらいカッコイイ」

「うん、カッコイイ!!」



芯に褒めてもらえたからそれでいいんだ。



イツキはいつもとかわんないけど、やっぱり俺に刃向かって来るくらいの実力は持ってるらしい。



「ココに着せたい服だったりするんだけどね~」

「先攻、イツキだろ。早くしろよ口だけイツキ君」



俺を潰そうとするヤツは俺が潰す。



イツキの写真は結構いい。



あの女も相当慣れてるってことはどっかの事務所の新人だろ。



でも俺だって譲らない。



「来い、美優」

「司っ!!あたし…できな…」

「できる。俺がお前を育ててやる」



イツキたちの撮影を見て怖じけづいたらしい…。



こんなことだろうと思った…。



芯には悪いけど俺は手段を選ばない。



「美優、おいで」

「うん…」

「お前カワイイんだから自信持てよ」

「えっ!?」

「俺に抱かれるなら死んでもよかったんだろ?その根性、俺は好きだ」

「司っ…頑張るっ!!」



最高の笑顔で何枚も撮った。



じゃれ合ったりたまに触れてみたり。



芯はどんな気持ちでいるんだろ…。



ごめんな、でも今俺がここで負けるわけにはいかない。



「オッケー!!終わり!!」

「もうヤダ!!バカ司っ!!」



すぐに抱き着いてきた芯。



お前がいちばん好きだ~!!



「頑張った俺にチューして?」

「んっ!!大好きだもん!!」

「あはっ!!俺も!!」



やっと終わった~!!



【芯】



司と美優の撮影を目の当たりにして、やっぱり少し苦しかった。



司は仕事なら誰にだって触るし、あんな楽しそうな顔もする。



なによりイヤだったのは司の瞳の中に美優がいたこと。



あたしだけしか見えなくなっちゃえばいいのに…。



そんなことを考えながら美優が着替えてる部屋に入った。



「美優……?あんた泣いて……」

「泣いてないもん!!」

「泣いてんじゃん!!どうした!?」

「司……諦めないといけないんだよね?」

「えっ…?」

「司は芯といる時じゃなきゃあんな顔しない。あたしに対する笑顔は仕事用だって……わかっちゃった」



美優も同じこと思ってたみたい。



こうして司のことが好きって言う人が目の前で泣いてる。



あたしさえいなきゃ、司は美優と付き合う可能性もあったわけで。



でもあたしは同情したりしないもん。



恋ってそういうもんだと思うから。



でもあたし、こんな時にどうしたらいいのかわからないんですっ!!



「ざ、残念だな美優!!司は…あたしのだ!!」

「傷心してる妹に普通そんなこと言わないよね?」

「あっ、泣き止んだじゃん!!しかも妹じゃない。あは…あははっ……」

「やっぱり告ってくる!!」



はい?



ダーッと走って司の元へ駆け寄った美優を追い掛けた。



告るってなに!?



諦めたんじゃなかったの!?



「司っ!!」

「あ?早く着替えろよ」

「あたし……司が大好きだった!!でもやめる!!あたしも司みたいに思ってくれる人見つけるからね!!」

「……おぅ。お前ならカワイイからすぐ見つかる。俺がプロデュースしてやったんだからな!!」



涙を流しながら笑う美優に少しだけ胸が痛んだ。



それと同時に、美優の潔さがかっこよく見えた。



美優のためにも司と幸せにならなきゃね。



「司、仕事以外であたし以外にカワイイって言っちゃヤダ」

「あっ!!う、ウソ!!美優、今のはウソだ。芯チャン以外可愛くないし、芯チャンだけカワイイ……ご、ごめんな?芯…」



大好き……。



そんな大好きな司と旅行に行く日が来た。



今日であたしと司は付き合って1年。



司が予約してくれた近くの旅館に行く。



近くって言っても新幹線で1時間。



あんまり近くもなかったかな?



朝から全てが楽しいんです。



「司君が迎えに来たよ……」

「行ってきまぁす!!」

「司君!!く、くれぐれも……き、清いお、お付き合いを!!」



そう言った彼女の親に対して変顔決め込んでる司は、とことんバカだと思う。



でもそんな司が好きでたまらない…。



あたしだって一応覚悟はしてますよ?



こんなに待たせたんだもん。



「「お土産買ってきてね~…」」

「「はぁい!!」」



あたしに抱き着く大地と、司に抱き着く美優。



ん?



美優。



「なにしてんじゃコラ」

「えへへっ!!グッバイ芯チャン!!」



諦めたんじゃなかったのか!?



でもまぁ、傷心中だから多めに見てやるか……。



そして今日の司はまたまたカッコイイ…。



あたし、そのシャツになりたい…。



あっ、ネックレスでもいい!!



パンツは…ちょっとレベル的にムリだからやっぱりシャツになりたい。



「どうした?」

「つー君に見とれてたんス」

「あはっ!!そんなに見られたら逆に俺が芯チャンに見とれる!!」



か、顔が溶けちゃいそうな笑顔っ!!



ま、眩しいよ司っ…。



あっ、あああああ、愛してる!!



「荷物持ってやる」

「いいよ!!駅まで近いし!!」

「免許あったら車で行けんのになぁ~…」

「あたしは歩く方が好きだよ?手繋げるから!!」

「キュン……チューしよっか」

「ま、待って。ここまだうちの敷地内……」

「ぶぅ~~~」



早くふたりだけの空間に行って思う存分イチャイチャしたい……。



早く司に触れたいです!!



最近やけに司に触りたい病が悪化してます。



まさかあたしって変態っ!?



そのまま新幹線に乗って、司の隣に座った瞬間、一瞬だけキスされた。



さ、さりげなさ過ぎて心臓がバックバク!!



あたし、不意打ちとか弱いんです。



「顔真っ赤」

「つ、司がしたからじゃん!!」

「だって今日ずっと我慢してんだもん。記念日だし…」



男の子という生き物は『記念日』なんて大事にしないものだと思ってた。



携帯をもらったのは1ヶ月記念日。



でもあれはあたしに気を使ってわざと1ヶ月記念日なんかにくれたんだと思う。



マメってわけじゃないけど、その司の気持ちが嬉しい…。



「まだ会って30分しか経ってないよ?」

「そう考えると今日ってずっと芯といれんだな」

「そうだね!!」

「1秒も離れたくない」

「あたしもっ!!」



今日、司と離れるのはトイレとお風呂くらい?



なんか、すっごく幸せなんだけど!!



「司のいちばん好きな時ってどんな時?」

「芯チャンといるとき」

「言うと思った!!」



今日が甘すぎてふにゃ~ってなっちゃいそう…。



そして、着いた駅で荷物をコインロッカーに押し込めた。



今からちょっとデートです!!



海の近くのこの土地。



名物は水族館!!



「見て見て!!くらげキレイだよ!!」

「カッコイイよなくらげって」

「ネオンみたいに光ってるね~。飼いたい…。あっ!!司っ、マンボー!!」



ものすごく楽しい。



だって水族館って初めて来たから!!



でも、大きな水槽を悠々と泳ぐ魚達を見て、少しだけ島が恋しくなった。



また行きたいな、司と出会った自販機…。



「芯、くらげ!!」

「ストラップだ!!買う!!」

「買ってやるよ。記念日だから」

「じゃあ司も付けてくれる?」

「えっ、くらげ?俺の携帯に?ストラップ付けんの?マジで?」

「露骨に嫌そうだからやめよっか…」

「し、芯がくれんなら…つ、付ける…」

「ムリしてる感たっぷり…」

「イヤだもん!!絶対ストラップって無くすもん!!」



はいはい、イヤなんですね…。



買いませんよ…。