「真緒が好きなんだ」
「……」
「芯ならって思ったはずなのに。ワガママでごめん」
「……」
「いくらでも待つから。いつか芯とまた幼なじみになりたい」
「……」
真っ直ぐ芯の目を見つめる
芯も逸らすことはない
「俺、真緒も芯も大切なんだ。ほんと身勝手だけど。それだけ言いたかった」
身勝手だ
自分は見ていられなくて離れたくせに、芯に求めるなんて
散々勝手なことを言い続けても、芯の表情は陰ることがなかった
「芯」
ぽつりと、でも確かに聞こえた声はもちろん真緒のもの
目で一歩踏み出す真緒の横顔を見る
凛とした横顔が真っ直ぐと芯を見ている
どこまでも真っ直ぐな真緒
「大切にしてくれてありがとう。支えてくれてありがとう。たくさん幸せをありがとう」
「真緒」
「何も返せなくてごめんね。何も与えられなくてごめんね」
「……たくさん貰ったよ。十分過ぎるほど幸せだった。こんな日が来るのが怖くなるぐらい」
「芯…」
真緒の目には大粒の涙が浮かぶ
今にも落ちそうな涙を、ぱちりと瞬きで消していく
泣かないように
泣かないように
真緒はまた一歩芯に近づくと、深々と頭を下げた
「あたしと別れてください」
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