少し考え込むように俯くと、ぱっと顔をあげた子鬼さんは、もう子鬼の面影は残っていない
今はもう大きなドングリ目の女の子だった
「真緒っ!真緒誤解したまま行っちゃった!!」
慌てたようにくるくる回って、
「真緒っ!泣いてたっ!傷ついてたっ!」
"泣いてた"
その言葉に、気づけば駆けだしていた
彼女が後ろで嬉しそうに舌を出していたのを気づかずに
思い当たるとこは全部行った
コンビニも学校も、公園も本屋も
真緒が行きそうな場所、会話に出てきた場所は残らずあたった
なのに、真緒の姿はなく時間だけが過ぎていく
焦れば焦ればほど頭が回らなくて、空回りしか出来ない自分に苛立つ
一息吐こうと屈んでいると、ポケットの中の携帯が震える
「はい……タクさん?」
『あぁ、新か?』
「俺今忙しいから掛けなおしてもいい?」
『だろうな。大体予想はつく。美波で真緒ちゃんだろ』
「真緒が…?」
『さっきまでな。俺からのサプラ〜イズ』
この切羽詰まったときに、間の抜けた声が神経を逆なでる
「タクさん、空気読めてないです」
『いや、冗談じゃない』
「なら…」
『颯は今日バイトか?』
「えっ?うん」
『なら、今から会うといい。うじうじあーちゃんに俺からのプレゼントだ』
「何したんだ?」
『それ言っちゃ退屈だろ』
会話すればするほど、タクさんは楽しんでるとしか思えない
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