愛子さんを泣かせる男など…男じゃありませんよ

「…で、旅行はどうするんです?」

「うん、行ってみようかな」

「そうですか
楽しい旅行になるといいですね」

「うん」

愛子さんが嬉しそうにほほ笑んだ

本当は嫌ですけどね

正直に言うと、藤城君も一緒に行く旅行に賛成なんてしたくないんですけどね

愛子さんが行きたがっているのに

頭から押さえつけるようなことをしたくないんです

…僕が心の広い大人だと…思ってもらいたいっていうただの僕の強がりなんでしょうね

大人の男と思ってもらいたい見栄かもしれませんね

「有栖川、お土産
なにがいい?」

「愛子さんの裸」

「ええっ?」

「いりませんよ、お土産は
旅行の楽しい話を帰ってきてから、聞かせていただければ…それでいいですよ」

僕は愛子さんに笑顔を見せた

愛子さんのほうから僕の手を掴んできてくれた

「私、有栖川が好きだからね
竜ちゃんなんかより、有栖川だからね」

え?

ここで…そういうことを言われると……