「は…はあぁ」

僕は息を吐き出すと、その場にしゃがんだ

愛子さんの怖い顔を見て緊張していたせいか…

一気に足腰の力が抜けた

「そんなことですか」

もうびっくりさせないでくださよぉ

心臓が痛くて…止まるかと思いましたよ

「ちょっと、『そんなこと』で片付けないでよ!」

「だって愛子さん、すごい怖い顔をして僕を引っ張るから
どんな話をするのかって、緊張しちゃうじゃないですか…
てっきり別れ話でもされるかと思って、心臓まで痛くなったんですよ?」

「え?」

愛子さんの目がきょとんとした

愛子さんが腰をおろして、僕と同じ目線の高さに合わせた

「そんな話しするわけないじゃん
私、有栖川がいないと生きていけないもん
そうしたのは有栖川でしょ?」

まあ、そうですけど…

でも…出ていこうと思えば、できるでしょ?

僕から離れて、一人で暮らそうと思えば…

僕だって極悪非道な人間じゃない

全く望みがないなら、愛子さんを引きとめたりしないよ