僕は自分の部屋のドアをきっちりと閉めると、携帯を手で握り締めた

『出るのが遅いですよ、聖一郎』

母上

女性にしては低めの声が、僕の耳の中を支配した

苛立ちが、胸を苦しくする

自然と肩に力が入った

「僕にも生活というのがありますので」

『ただの恋愛ごっこに何を言っているの?』

はいはい

どうせ、僕の話なんて聞くつもりはないんでしょ

「今日のご用件は?」

『仕事が終わったら、家に帰ってらっしゃい
大事なお話がありますので』

「どんなお話ですか?」

『んふ、ここで言ったら、呼ぶ意味がなくなるでしょ
飯島から、5時には教室が終わると聞いていますから
6時には家に来れますね?
待っていますから』

僕の返事も聞かずに、母は電話を切った

いつものことだけど

僕の返事も予定も気にせずに、一方的に意思を押し付ける