「わたしと聖一郎様の結婚は決められたことですから」

「僕は結婚するつもりはないですけど」

使用人の一人が、僕に緑茶を入れると部屋を出ていった

6畳の部屋には、椎名さんと僕だけになる

「……なあんてね」

「はあぁ?」

椎名さんは正座している足をのばすと、手をついて両足の血行をよくしようと揺らし始めた

「ああ~、くるしっ
ああ、もう…なんなんだよ!
和服は嫌だって何度も言ったのに、信じらんない」

椎名さんは眉間に皺をよせて、ぶつぶつと文句を言っている

はい?

なんですか、この人?

僕は緑茶の入っているお椀を手に持った

「あ…それ、飲まないほうがいい
媚薬が入ってるっておば様が言ってたから
既成事実を作って、たとえ妊娠してなくても妊娠したって騒いで入籍するのが
おば様の計画だから…」

椎名さんがたちあがって、しびれた足をよろよろと動かした

「ああ…もうっ、足がしびれるのって苛々するっ
なんだって正座っていう座り方があるんだよ
胡坐でいいじゃん、胡坐でっ」

なに?

この人は一体…何をしたいのでしょう?