「決着がつかなかったら、どうするの?」

「つきますよ
母の許しがなくったって、正直どうでもいいんですから
前にも言ったでしょ?
老い先短い人の意見など、関係ないんですよ
笑顔で、かわせばいいんです」

有栖川がくすっと笑った

どうして…

それでいいの?

有栖川は、それで本当にいいの?

私、有栖川が苦しむ姿は見たくないよ

私はぎゅっと有栖川の着物を掴んだ

「本当にいいの?」

「母はわがまま過ぎるんです
それにずっと振り回されて生きてきました
それが正しいと思っていたから・・・でも違った
狭い世界で僕は生きてきたと思いました
これからは広い視野で、自由に生きたいんです
そこに愛子さんは必要なんです
僕の隣に居てほしい
駄目ですか?」

私はふるふると首を振った

「駄目じゃない
凄くうれしいよ
でも、有栖川が母親のことで苦しむんじゃないかって思うと…苦しくて」

「なら、平気ですよ
母のことで苦しまないですし、愛子さんが暗い顔をしているほうがずっとずっと苦しいですよ」

有栖川が、私の頬をそっと触れた