家に帰る

学校の荷物は、重いからと勇人さんの命令で、竜ちゃんが運んでくれた

旅行で、会おうと約束をして別れた

夜8時すぎ

有栖川が帰ってくる

「愛子さん、ただいま」

優しい声で、私に声をかける

私はソファで振り返ると、有栖川の顔を見て微笑んだ

「おかえり、有栖川」

私の笑みを見て、有栖川も嬉しそうな顔をしてくれた

「有栖川のお母さん…怒るよね」

ぼそっと言う私の言葉に、有栖川がにっこりと笑った

「そんなこと知りませんよ」

「え?」

「母がどう思おうと、これは僕の人生ですから
僕の好きなように生きるのが、普通でしょ?」

「そうだけど…」

有栖川が私の横に座ると、ぎゅっと抱きしめてくれる

「僕は、ずっと愛子さんが好きでした
母の我が儘に、もう振り回されたくないんです
8月末日に、椎名さんと母に会いに行ってきます
決着をきちんとつけますから、愛子さんは気にしなくていいんですよ」

有栖川の穏やかな声が、耳の上から聞こえてきた