「こいつ、絶対に言わないだろうから言っておく
今回の件で、こいつだけが、最後まで愛子の起用に反対してた
有栖川もお前を使うことに折れたのに…な
全然、関係ないこいつだけが、ずっと俺に「愛子を使うな」って怒ってたんだ」

「え? 竜ちゃんが?
信じらんない」

「信じ…ちょ、ええ?」

竜ちゃんががっくりと肩を落とした

莉子さんが、竜ちゃんの横に立つと慰めるように肩を叩いた

「僕って信用されてない?」

「信用されたいの?
私を裏切っておいて?
馬鹿なことを言わないでよ」

「はあ…僕、ハートブレイク」

竜ちゃんが、胸をおさえて蹲った

なんか、こういう竜ちゃんって慣れないなあ…

私の知っている竜ちゃんとは違う

もっとキリってしてて、背筋を伸ばして前を見つめているってイメージが強すぎて

「期待してたお前が馬鹿なんだよ」

勇人さんが、背中を丸めている竜ちゃんの背中を蹴った

ごろんと前に竜ちゃんが転がって、額を床にごつんとぶつけた

「ええ?」

私は驚いて、目を丸くした

「いいの、いいの
藤城君は、Mだから」

莉子さんがにっこりと笑った