「ほら…お前から踏み出さなくちゃ…前にはいけねえよ」

勇人さんがぽんと背中を押してくれた

こういうときの勇人さんって、すごく優しく大きな男性に見える

勇人さんの隣にいる桃香さんも、力強く頷いてくれる

私は一歩前に出ると、口を開こうとした

「ちょっと! 勇人さん、聞き捨てならない言葉を耳にしましたけどっ」

竜ちゃんの大きな声で、私の勇気を一瞬で、砕け散った

口をぽかんと開けたまま、莉子さんの顔を見つめる

莉子さんも『あっ』という表情で、固まっていた

竜ちゃんは大股で、勇人さんの前に立つなり、勇人さんに頭を平手打ちされた

「な…何なんすか!」

「空気の読めねえ奴だな」

「は?」

竜ちゃんは首を傾げた

「愛子も莉子も、この馬鹿之介のどこがいいんだよっ」

勇人さんが、竜ちゃんの背後に回るとお尻を思いきり蹴った

竜ちゃんは、『うえ?』という間抜けな声を出しながら、床に四つん這いになった

「情けないところかなあ」

莉子さんが苦笑する

「弱いところがつい女心を刺激するんだよね」

私も口を開く