「ちょっと、トイレに行ってくる」

椎名さんが立ち上がると、すたすたと部屋を出て行った

僕は、須山さんと二人きりになった

…って僕、この人、苦手なんですけど

目が怖いんですよね

ぎろって睨んで、僕を思いきり敵視しているから

でも今日はそんなに敵視オーラが出てないかも?

睨みもきつくない

どうしたのでしょうか?

この前、椎名さんがプチ家出をしてから、きちんと話をしたのでしょうか?

「有栖川」

え? 呼び捨て?

まあ、須山さんのほうがはるかに年上そうですけど

いきなり呼び捨てとは…ちょっとびっくりですよ

「はい、何でしょうか?」

「携帯のアドレスを聞きたい」

「はい、いいですよ」

僕はほほ笑むと、鞄の中から携帯を出した