「竜ちゃんのところに戻るなんてあり得ないよ」

愛子さんがにっこりと笑う

「竜ちゃんは莉子さんがいいんだもん」

「じゃあ、もし莉子さんと別れたらどうなるんですか?」

「さあ? 知らない
莉子さん以外の人を探すか…莉子さんを追いかけてストーカーにでもなるんじゃない?」

「愛子さんのもとにくる可能性だって…」

「ないない
だって私、有栖川と結婚するんでしょ?」

そうですね

愛子さんが16歳の誕生日を迎えたら、入籍をするんでしたよね

僕は、なに不安になっているんでしょうね

「そう言えば…飯島さん、珍しく寝不足気味で首に噛み痕がありましたよ」

僕は、話題をかえた

じゃないと、また昔の自分を思い出してしまいそうで…

望みの薄い恋を、ひたすら追いかけていた幼いころの僕が顔を出してしまう

「ええ? 冴子に恋人誕生? やっぱ…この前の人かなあ」

「ああ、愛子さんにずっと抱きついてましたよね
確か、蒼野さん…でしたっけ?
幼馴染で、飯島さんのお兄さんの許婚だとか…って聞いてますけど」

「許婚同士ってさ、きっとうまくいかないのよ」

愛子さんが力強く頷いた

いや…そう断定はできないと思いますけど?