「君こそ、失礼じゃないの?」

高波さんが、低い声を出した

「ああ、そうだね
僕は藤城竜之介…愛子の婚約者だけど…こういうの、頭に来るんだよね?
人の女に勝手に触らないでいただけますか?」

竜ちゃんも、高波さんに負けじと低い声を出した

高波さんの手を掴むと、ぐいっと持ち上げてくれる

私の手が、自由になる

ほっと息をつくと、私はすぐにテーブルの下に手を隠した

怖かった

竜ちゃんが近くにいてくれて、良かったよぉ

「婚約者?」

高波さんの目が険しくなった

たぶん、竜ちゃんに掴まれている手が痛いんだと思う

「…で、旅行、行けるだろ?」

「え? あ、うん
連絡しなくてごめん」

「いいよ
一緒に行けるってわかってたし」

竜ちゃんがにっこりと微笑んだ