高波さんが、私の手の上に手の平を乗せてきた

男の人の大きな手が、私の手を簡単に覆ってしまう

私は驚いて、手を引っ込めようとするが、高波さんの手がぎゅっと強く握りしめてきた

「愛子ちゃん、嘘はよくないよね?」

え?

私は目を大きく見開いた

高波さんの顔が、怖い

優しい仮面がすっかり剥がれて、冷たい顔をしていた

「何も知らないとでも思って、からかっているの?
何がしたいのかな?」

「は?」

バレ…てる、の?

私は高波さんの手の中から、離れようと腕をぐいぐいと引っ張るがびくともしなかった

「何のこと…ですか?」

「シラを切るのは…誰かのため?
どうせ聞いているんでしょ?
生徒の女性に手を出しては、泣かせている男だと…有栖川先生から」

高波さんの口元がにやりと持ちあがる

どういうこと?

勇人さんの存在は知られてない?