「あ…そうだ
忘れたから、言っておく」

椎名さんが車から降りる前に、僕に振りかえった

言っておく…ってなんでしょうか？

「聖一郎のお母さんに、今夜、聖一郎のマンションに泊まりに行ってもいいですか？って
言ってあるから！
よろしく」

椎名さんがにこっと笑った

「はい？
なんでそんなことを…」

「だって、なんか仲良くしているところを見せておいて方がいいと思って
だから電話だけど、しておいた
まあ、きっと一人で喜び酒でもやってると思うぞ
それと実家に行く日は教えてくれ
実家に押しかけてやる」

どうして…乙葉さんはそこまでやるのでしょう？

そのせいで、元さんに誤解されているのに

「椎名さん、そこまでなぜ？」

「私は、聖一郎の母のような人間が嫌いだ
どうして好きな人と好きに生きてはいけないのだ？
しかも私の家を馬鹿にした
聖一郎に女がいるせいで、格上の家と婚約できない
目をつぶって、私で我慢してやると…
ふざけるなと思った
聖一郎には悪いけど
私は、あの人の悔しがる顔を見たい
それだけだ」

乙葉さんがにやりと笑った

「女の子がそんな風に考えるものではありませんよ？」

随分とひねくれた女の子ですね

少し前の愛子さんを見ているようですよ