携帯は、床を滑って私の足もとにやってくる

液晶を見る

『須山 元』
『通話中』

と表示されている

「あ…通話中になってるよ」

「ええっ?
誰…だれ、誰から?
…てか、愛子が代わりに電話に出ろよぉ」

乙葉さんは私の枕にしがみついた

乙葉さんって、可愛い

電話くらいで、そんなに必死にならなくても……

怯えてる子ウサギみたい

全身をブルブルふるわせて、目を閉じて枕にしがついて…これで猫耳でもついていたら

…マニアにはたまらんかも…って何を考えてるんだろう

「私が出て、どうするのよ
ほら、電話だよ」

「嫌だぁ…無理ムリむり!
絶対に無理ですからぁ…わたしが電話に出たら、大地震がくるよぉ
天変地異になる
悪魔が目覚める」

「…いや、それはナイから」

私は携帯を拾うと、乙葉さんに差し出した