帽子をかぶった彼女を自宅付近まで車で送り、私は帰途につく。

海のそばを走ると、ムッと潮の香がした。

不愉快な匂いだ。

家に帰る匂い。

家庭は、家庭である。
それ以上でも以下でもない。

私は夫であり、父親である。

ただそれだけであるという、不愉快さだ。

言葉通り、夫であり父親である。

なぜだろう。