「昔、聞いたことがあるんだけど、ピンキーリングって、幸せが逃げるのを防ぐって意味があるんだって。だから。」


涙を軽く手でふるい落とし、美しい笑顔で彼女はそう言った。




幸せが逃げるのを防ぐ。

私といる事を、幸せだと言ってくれた。

こんなに痩せて、辛い思いをして、それでも気丈にふるまう彼女が、私といる事を幸せだと言ってくれた。

私まで、涙が出そうだった。

だが、私が泣けば、彼女はまた無理をして気丈に振る舞う。

私はただ、彼女を見つめて、

「ありがとう。」


そう一言、沢山の思いを込めて、言った。