「ねぇねぇ、昨日さ、袖乃さん見た!?」
一人の女の子が後ろの席の女の子に聞く。
「え~っ。見てない!修司見た?」
その女の子はまた、隣の男の子へ聞く。
「俺見たよ。
雷さんと話してた。」
「雷さん?あたし見たんだけどな~。
あっ、袖乃さんって吹雪さん!?」
「そうそう。HN一緒じゃねぇか」
こんな会話が続くのも……
もう短かった。
毎日聞くこの会話。
あたしはその後ろでこの会話を聞いている
「ねぇ明日佳は吹雪さんか袖乃さん見た!?」
突然一番前の女の子、有紀が喋り掛けてきた。
「あ、うん。一緒に喋ったよ」
こんなのも嘘。
あたしの正体は今じゃチャットの住民はみんな知ってる……
鈴鹿 袖乃なんだから―…
「まじぃ!?いいなぁ~…
つかさぁ、あたし明日佳をみたことないんだけどっ」
「あーうん。夜中にやってるからね」
サラッと返し、あたしはまた会話を聞く。
本を読んでるふりをしながら…
* * *
家に帰り着き、すぐにパソコンをつける。
制服から私服に着替え、パソコンの前に座り、チャットを開く。
名前: 鈴鹿 袖乃
H N: HN:柳 【スズカ シュウノ】……
入室ボタンを押すと、みんなから挨拶された。
一樹 有希: こんにちわぁ~
相沢 ナナ: きゃーっ、袖乃さんだっ!こんにちわ!
柚木 秀二: おいっす。
有希は有紀…
ナナは奈々子
秀二は修司…
あの三人がそろっていた。
あたしが来たことでかなり驚いているんだろう。
鈴鹿 袖乃: こんにちわ。みんな元気だね~。
あたしは一応返信すると、違うチャット場を開き、入室した。
そこには……雷ともう一人、別の人がいた。
その人が―……あたしの愛した人だった。