マコトは、両親の顔を知らない。
学園長によると、三歳頃の自分は教会の前に捨てられていたそうだ。
何故自分が捨てられたのか、なんてことはマコトは知らなくていい、と思った。知りたくない、の間違いかもしれない。
自分を捨てた両親のことなど、知ってどうするのだ。
会いに行くのか?わざわざ、自分を捨てた両親に?
それでも、マコトは少しだけ両親に感謝している。
学園長がこうして拾ってくれ、世話を見てくれている。この学園に入れたのも、学園長のお陰だ。

マコトは寮の自分の部屋から、窓の外を見た。何故か薄黄色のカーテンは視界に入らない。
外には空が広がっていた。今の空の色は宇宙色だ。普段なら見えない美しい星達が瞬いている。

黄色い髪を手で掻き揚げる。いつも空を見ていると、何か思い出せそうな気がする。

何をだ。
何かをだ。

小さい頃の記憶のことを。三歳程の自分の、当時の記憶を。

―――ト
と、マコトの脳裏に声が聞こえた。
女の人の、声。
それは昼、夢に見た声だった。
聞き覚えのない声。でも、どこか懐かしい声。

「…っ、誰?」

―――…マコト
その声は、自分の名を呼んだ。

「どうして、僕の名前を知ってるの?」

―――それは…
「貴方を導く為」
声が、脳裏から離れた。