「なんで、お前がここに……?」

当然の疑問が、唖然で開いた口から勝手に這い出た。

野々村は、いつの間にかいなくなっていたのだ。

あの日、なにをどれだけ何度言っても離れなかった彼は、ギルディウスと、木佐木・レン・クリムゾンと接触した時から、いつの間にかいなくなっていた。

あの時はまったく気にしなかったし、あとからも、気にしなくていいと思っていた。

今こうして現れるまで、思い出す必要性すら感じなかった男が――

なぜ、ここに?

「へっへ、言っただろぉが。お前みたいに無茶するヤツ、ひとりにできるかよ」

そんな、理由で……?

真人の疑問は、まったく解消されない。

自分が666に拘束された時のことを思い出せば、ここは、一般人が容易く忍び込めるような場所ではない。

基地内の関係者はみな所属章らしきものをつけているので、部外者はすぐにわかる。

独房まで歩かせられた時も、通路のそこかしこに監視カメラを見た。

独房があるここへはエレベーターで来たし、エレベーター内にもカメラはあった。

なにより、あのエレベーターは所属章を読み込ませないと起動しなかったと思う。真人はそう記憶していた。