レンは、ギルディウスのキーを取り出す。車の鍵と似たそれのボタンを押すと、駆動音。ギルディウスの目に淡いブルーの光彩が宿り、仮起動する。頭部が大口を開いた。

滑車で自動的に下ろされてきた足掛けを掴み、レンはコックピットへ上がっていく。座り慣れたシート。自分の匂いが染み着いた、居場所。

「んっんぅ~……、はあっ。やっぱり、ここがいっちゃん落ち着くねぇ」

大きく伸びをする。その動作と一緒に、足の間にせり出しているパネルを、爪先で押す。行儀なんて関係ない。

ブシュゥっと鈍い排気音を吹き出して、ギルディウスの頭部が閉まった。まるで、巨人がレンを丸呑みしたようにも見える。

キーとはいっても、ここから先の操作に鍵は要らない。

レンと支倉、そして一部の技術者のみが知っているパスワードをパネルに打ち込めば、ギルディウスのシステムは起動する。

だが、ここからの、『操縦』となれば話は別である。

「ギルディウス・マキナ、システム起動」

――キゥィィィィィンンンンン――

登録されているレンの音声に反応し、甲高い音が響き始める。そう、ギルディウスが闇から目を覚ます音。