少しの沈黙が流れるとスッと襖を開けて蘭が入ってきた。



「らっ!!蘭姉様…あっあの…!!」


うまく言葉がでてこない。
蘭が月の横に座ると笑って優しく頭を撫でた。

「ねえ月」

撫でていた手が止まり、頭から手を放すと悲しそうな顔で言った。


「負けてしまったことは気にしないで」


「えっ…?」

「どうして父上が試合前になにも言わなかったかわかる?」

なにも答えずに首を横に振った。

「あなたに女として生きる道を残したの」

「どうゆうことですか?」

布団から身を乗り出し、蘭を見つめる。


「本心は女子として育てたかった、それが母上の願いでもあるからよ。」

母上の…。

「時代が戦国の世となり、父上の容体も悪くなる一方だった。生きる力を、生き延びる力を。そして何より城を守り、民を守る力を…あなたにつけてほしかった。でも、あなたには無理をさせてしまった事を悔いているの…その気持ちは私たちも一緒…」


蘭の目から涙があふれる。
その様子を見ながら、頭の中はぐるぐる回っていた。

私が無理してた―――?
そんな風に姉さま達には見えていたの?

違う、違うよ――!!


昔から女性としての作法は、手だてなく習ってきた。
でも、それは窮屈に思えて性にあわなかった。
刀を振っているときは楽しかったし、何より軍事の学問を覚えるのは面白い。
その学んでいる時間が国を守りたいという気持ちにも繋がった。

その思いを伝えたいのに、気持ちが混乱していて言葉にならない。