「一本!」


大きな声で旗を振り上げたのは、主審だった。
それが何を意味するか私はすぐにわかった。

(ま、負けたー?)


あたりのざわめきがあるなか

「では、約束通り蘭姫と婚約し、王座を譲り頂こう」


表情でわかるくらい嬉しそうに笑う。


立ち上がろうとする月だが、意識がもうろうとしてよろめいて立てない。
手を指し伸ばしながら意識が薄れていき、目の前が暗くなった。

待って…。 待って…。

頭の中で何度もささやく。

「…待っ…て!」

月は自分の声でハッと目を覚ました。
慌てたようにあたりを見回すと、すぐにそこがつにの寝室だとわかった。

足元に目をやると横たわって寝ている千代の姿があった。



「千代…姉様?」



んっと千代が目を覚ますとよかった。目を覚ましたのね。と月の手を優しく握った。
月の目覚めに安心した千代は高熱があり倒れたことを教えてくれた。

意識が少しずつ戻ると、事の状態を思い出した。



「負けたんですね…」


千代は何も言わず、小さくうなずいた。