………茉梨亜………

拜早………？







目が覚めると、白い天井がぼんやりと浮かんでいた。



（おなかすいたぁ………）




自分の腹具合を思いながら、徐々に意識がはっきりしてくる。


「はっ！？」


勢いよく茉梨亜は跳び起きた。


白いベッド。

診察用の簡素なそれの上に茉梨亜は居た。


「こっここは！？白の怪物は？ジャンパーの人達は？それに今何時！？」


「そんないっぺんに聞かれてもあれだが、そこまで元気なら大丈夫だな」

聞こえたのは軽めの口調、低い男の声。


「だっ誰！？」


ベッドから少し離れた事務机で、白衣の男が作業中の手を止めてこちらを向いていた。

机には紙やらファイルやらが無造作に積まれている。

「誰とは心外だなぁ、おまえの傷を手当てしてやった王子様だぞ？」

最後に意味不明な単語を残した男は、にんまりとした顔付きで茉梨亜の肩を指差す。

「あ…」

肩に触れると包帯の感触がしたが痛みは無かった。

「良かったな、出血の割には深い傷じゃなかった。まぁもう少し首寄りだと危なかったが…」
男は椅子から立ち上がり、茉梨亜の様子を伺う。

「しっかし…一体どーしてこんな事に」
「そ…それはあたしが聞きたい…！」

男は思案する様に言ったが、茉梨亜自身何がどうして自分が切りつけられたのか理解出来なかったのだから。

「ねぇ！あなたは何者？ここどこなの？」
茉梨亜は男を避ける様にベッドの上を後退りて問いかける。

男が一瞬真顔になった様な気がしたが、素直に口を開いた。

「……ここはＢブロックの民間診療所。俺はここの担当医、管原弾（すがわらだん）だ」

「スガワラダン…」

あの肩の痛みが無いくらいなのでこの男の医者の腕は確かだろう。
しかし……

ボサボサの黒い短髪にシワが目立つ白衣。
見目三十代位かの不精髭がはえる顔は目が鋭く、細面だが背丈は１８０を越えるくらい高かった。

「あなたお風呂入ってる…？」
茉梨亜の印象はそれだった。
管原と名乗った男からは妙な匂いが漂っていたからだ。