「さて……侵入者の詳細は?」
最上階の所長室。
観崎棋市郎はデスクの上で指先を組み、目の前の人物を見つめる。
「今調べています。塔藤主任から連絡があった部屋が待機室5、直後そこから不審な人物が走り出るのを防犯カメラが映していますので、外見から探し出せます」
白衣を纏った男はしっかりとした口調で説明した。
「映像を確認した警備員によると、どうやら女性らしいと……」
男の補足に観崎は微妙な反応をする。
「一人の侵入者に、しかも女性とは……心当たりはありませんね。まぁ警備員と研究員が注意していればすぐ見つかるでしょう」
「教授、先程打っておられたものは?」
男はふと観崎の手元にあるノートパソコンに目を落とす。
「メールですよ。各班の代表に侵入者の連絡をしました……不審と思われる人物は発見次第捕らえて置くように、とね」
「成る程、警備員だけでは侵入不可の場所もありますからね」
男は納得する様に頷き、観崎は同意する。
「その通りだよ盟代(めいだい)君。なんにしても侵入者なんて驚きだ。早く捕らえねば……」
観崎は目を細め、何か思案する様に指を組み直した。