泉の背は開かれたままの扉にあたる。

廊下から白衣の男達二人が、不審そうにこちらを覗いていた。


「……おまえ達、何をやっている?」

先程の管原と同じ雰囲気だった。
また説明するのかと泉は億劫そうに折笠を見ると、


(……え?)

折笠を目にした一瞬、明らかに青年は厄介なものを見る様な顔付きを示した。

だがそれもすぐに消える。


「……佐倉さん」

折笠は、泉に説明する様促した。


「あ、えぇ……私達は建築調査の……」

「建築調査?」
「あの定期的なアレか」

研究員二人は顔を見合わせ、半ば納得しかけながら口を開く。

「何か証明出来るものは?」

「なら、これを」
泉はカードケースから二枚名刺を出したが、研究員二人はそれを受け取らず視認しただけだった。

「AMNか……」
「そちらの方もいいですか?」

振られた折笠は無言で泉の前へ出て、

「……」

彼も名刺を差し出す。


「同じか……」

「(え……?)」
白衣の男が呟いた言葉に、泉は小さく目を見開く。

そのまま後ろから泉が見たものは、折笠の持つその名刺……

名刺に記載されていたのは。


(っ、この人AMN所属になってる!なんで……)


男達は折笠と泉が首から提げている関係者許可証を一瞥し、軽く頷いた。

「失礼しました、引き続きお願いします」
「だが関係者以外立入禁止の扉はむやみに開けないで頂きたい、危険な薬品を扱っている場合もあるので……そこに入る時は近くのスタッフに一度声を掛けてくれ」

淡々とそう残して二人の研究員は去っていった。


「まったく……手間が掛かる」

折笠が面倒臭そうに溜め息を吐き、出した名刺をしまおうとした時……


「折笠さん」

通る声ではっきりと、泉は青年の名を呼んだ。

そしてまだ折笠が手にしていた彼の名刺を素早く取り上げる。

「!」


「……ねぇ、凄く不思議な事があるんだけど、まさかこんな物証持っててしらばっくれるなんてないわよね?」

泉はどこか不敵な笑みを浮かべ、折笠を見上げた。