白い壁、白い椅子、白い部屋……


そこには白い白衣を着た男達と、頭から足先まで白い少年が居た。

……少年の肌はまるでアルビノの如く青白さが目立ち、最近まではまだうっすらと茶色がかっていた白髪は、更に色素が抜けてしまった様だった。


――少年は椅子に座っている。

――白衣の男達は彼を囲み見下ろしている。

――白い壁の上部には無機質で小さな監視機械が各角一台づつ吊されている。

――そこから送られるものは勿論白い映像……

いや、一点だけ色があった。

それは何色にも染まらない漆黒の……

背広を纏った当研究施設所長、観崎の姿だった。



「どうだね、記録は」

「……予想以上です」

観崎の言葉に白衣の研究者達は口火を切る。

「これ程の回復力とは正直驚きました。このまま行けばすぐ視力も元に戻るでしょう」

白い少年の両眼には、目隠しの様に巻かれた包帯。
それを見下ろした観崎は満足気だ。

灰色の口髭と同じ色の柔らかな髪質。紳士的な風貌を表しているが、その瞳の奥は鋭い。


少年の身が、今どうなっているのか……
少年自身が理解していないわけではないだろう。
だがそれでもなんの抵抗もなんの表情も示さなかった。

ただそこに座っていた。


「しかし……フェレッドがあまりにも出来が良いのは考えものだな」
観崎は思案する様に、だが言葉に反し満足気に呟く。

「それで、シティリアートの方は?」

「待機中です。あの子も素晴らしいですよ、フェレッドのものを組み込ませた途端……」

「いい成功例だ、大切に扱わねば……この子と共に」


白い部屋にくつくつと笑みが零れた。


研究施設のとある秘密室での出来事。

入口の扉は何枚にも重ねられているが、人目に付くその一枚目はただの倉庫扉に思わせるものだった。


よく見れば小さく文字が書かれたプレートが、その扉に張ってある。


……そこに書かれていたものは――