「仲良いってわけじゃなかったよ」
ぽつりと呟やかれた言葉に咲眞は少し目を見開く。
「あたし小さい頃チビなりに荒れてたから……逆に、構ってくれたのは拜早なの」
そう言って苦笑する。
「拜早がちょっとクールになったのは、あたしのせいかもしれない」
「最初は熱血だったとか?」
「あはは、熱血拜早って見てみたいかも!」
クスクスと笑う。
「拜早は普通の男の子だったよ。でもあたしが子供だったからお兄ちゃんしてくれたの、きっと」
一つの小さな溜め息。
「拜早、ちゃんと返事してくれるかな」
いつも曖昧な拜早の返答。
冗談に取られかねない自分の「好き」の態度にも、問題はあったのだが。
「さぁ、でも……」
咲眞も空を見上げた。
「拜早も男の子だからね」
「……それ、どういうイミ?」
計れない咲眞の言い分に首を傾げる。
「拜早は……」
……拜早は優しいから、何も態度に表さないのかもしれない。
(もしかしたら僕を気遣っているかもしれない……)
ひそかに自嘲する。
でもきっと拜早は茉梨亜の事を想っている。
じゃないとあの時の廃屋で、白の怪物は“茉梨亜”の頬に手を添えなかった。
あんな顔をしなかっただろう。
「あ、だけど拜早と付き合いたいとかそんなんじゃないから!」
茉梨亜がふと思い出した様に照れて言った。
「これからも何があるか分からないでしょ?……ずっとこのままっていうのは無いんだって、実感したから」
一度崩れた関係を、言っているのだろうか。
「だから、ちゃんと伝えておこうって」
見上げた空はやはり黒紫。
そんな中朧げに光る白い星は、なんだか周りの色達に飲み込まれそうだった。