白い壁、白い扉、白い廊下。


研究所というより、そこは大型病院を思わせる。

清潔な内装、整った設備。




広い廊下の奥から、二人の白衣の男達がガラガラとストレッチャーベッドを引いて来た。

手術台の様なそれには人間が乗っているみたいだが、上からばさりと白い布が掛けられている。

……死亡者と思える様な扱いだ。


白衣の男達はストレッチャーの後ろと前に一人ずつ付き、進行方向へ真っ直ぐ向かっていた。


「あれ、それナンバー443?」
偶然擦れ違った、焦げ茶髪の白衣の男が声を掛けて来た。

「そうだ、先程受け取った」
ストレッチャー前方の男が口を開いた。口調と違い、まだ若い顔立ちに眼鏡を掛けている。


「大変だったなぁ〜どうすんのこれから。上からの指示は出たのか?」

「あぁ」
軽い感じの男の質問に、眼鏡の男は短く答え、後ろに居た男が補足した。

「ナンバー443の使用は続行、例の民間人は研究所(ここ)に置いて研究補助をして貰うらしいぜ」
彼の言い方はどこか皮肉めいている。



「…と、いう事はその民間人も新たなナンバーにするって事かぁ。アリサだっけ?そいつ」
「茉梨亜だっつーの。ま、そっちは勧誘班に任せるけどな。俺らはデータ採るだけよ」


「おい、そろそろ行くぞ」

眼鏡の男の言葉を合図に茶髪の男とは別れ、また二人の白衣とストレッチャーベッドは進み出す。



そしてストレッチャーもすっぽり入る巨大なエレベーターに乗り込んだ。

「違う、6階だ」
「あ」

男が押し間違えたボタンを眼鏡の男が戒める。

「まーいぃじゃん」

気にせず笑顔で男は扉を閉めた。


「しかし面倒だな、こいつの移動……」
「いつもやってくれている一般社員に感謝だな」
項垂れる男の反面、眼鏡の男の方は無表情に言う。

「しかしなぁ、折角棗が会いに来てくれたんだが……」
「そういうな、診療所で燻(くすぶ)っているよりマシだ」
「オマエは真面目だねぇ〜」

エレベーターの到着音が短く鳴った。