留置所に居たのはたった一日。
その後黒川邸で働いていた……正確には連れて来られた人達の、半分は釈放された。
その釈放の基準は分からなかった。
…紀一や峯が口添えしたのだろうか。
留置所から出て来た時、やはり紀一達の姿はなかった。
もう、会う事もないかもしれない。
「……」
スラムに向かう護送車の中、微かに胸に穴が空いた気がした。
黒川邸の人達を大半は嫌悪している。
無理矢理連れて来られて、逃げられなかった場所なのに……
「……うん」
ああそうだ。
自分が会おうと思えば彼らには会えるのだ。
だから何もこんな不思議な気持ちになんか、ならなくていい。
「こんなだから……逃げられなかったんだよね」
自分に甘いのか、意気地がないのか、それでも全てを嫌悪出来ない自分がいた。
「こんなんじゃ……怒られちゃう、かな」
二人に。
けれどあの二人だったら
もう全部笑って、自分を受け入れてしまうのだろうか。
……苦笑して、下を向いた。
なんだか申し訳なく思った。