「紀一さん!!」

けたたましく扉が開く。

倒れ込むかの様に部屋へ現れたのは数人の黒服達。
皆サングラスを掛けているものの、血相を変えているのが分かる。

「や、やばいです紀一さん!!」

名指しされた紀一はなんとも言えない表情を浮かべて顔を上げた。

「何だ、騒がしい…!」

「さ、サツが!!外の奴らが乗り込んで来て!!」

その言葉に茉梨亜がびくりと反応する。
拜早も驚きを隠さず咲眞へ振り向き、咲眞は眉を顰めて黒服達を見つめた。


「警察だと?なんで……」

先程の茉梨亜への取り乱し様はどこへやら、紀一は低い声色で咲眞達を見やる。

それに対し咲眞が首を横に振り、

「さぁ…そんな顔で見られても、僕も分からないよ。たださっき窓から警察が見えたから何かあるとは思ったけど」

まさか突入してくるとはね、と肩を竦めながら添えた。

「どっどうします!?」

後がなく焦る黒服達。
紀一は手早くスーツを整え、


「……茉梨亜」


「!」


少女を見下ろす。

その瞳は寂しげで、それでも大人の目をしていた。

「俺には君が必要だった。それだけは、覚えていて」


そう。

それだけ言葉にして、紀一は少年二人を見ずにそのまま部屋を横切る。


「……」

黒服に対し何かを喋り始めた様だったが、頭の回らない茉梨亜には聞ける余裕も無く。

そして紀一は黒服と共に部屋を去った。


……それは今までのここのやり取りを呆気なく終わらせるのに充分で。

ただ開いたままの豪華な扉だけが


ぽっかりと。