「あずさ…?」

あずさは言った通りすぐ部屋に戻って来た。

一人の少年を連れて……


「美織ちゃんっこの人に腕治して貰おぅ〜」

笑顔であずさはその少年を指す。

「え……だ、誰?」

いきなりの知らない人物の登場に美織は困惑を隠せなかったが、あずさが得意気な顔を作って大丈夫よぅ、と言ってくれた。

「あたしのカレシなの〜〜あたしを心配して入って来たみたい〜!」

「誰が……」

可愛く言ってのけたあずさに対し、何故か少年は怪訝そうな目付きを向ける。

カレシ、ではないのか…?

少年はニコニコしているあずさを一瞥した後、天井を見上げた。

…やはりこの部屋にも監視カメラは着いている。が、電源は落ちていた。


「……で?腕が何だって?」

少年がベッドに腰掛ける美織に目を向けると、美織は思わず警戒する。

「美織ちゃん心配しないでぇ!さっ手ー出してっ」

少年と美織の間に入ったあずさは美織を宥め、少年に美織の手を診る様促す。

「おまえその喋り方キモいんだけど……あぁ、これくらいなら固定しとけば治る、半日はあんま動かすなよ」

少年は軽く美織の手首と肘間接に触れてから、着ていたトラックジャケットから白いテープを取り出した。

「包帯持ってるなんて流石よねーっ頼れるぅ〜」

あずさに褒められたにも関わらず少年は何故か青い顔をし、美織の捻られた間接全てにきつくテーピングをして包帯で固定する。
美織が驚く程それはスムーズで、少し手首を動かしたぐらいじゃもう痛みは感じなかった。

「あ…ありがとう……」

「……おまえ、無理矢理連れて来られたんだろう?早く逃げた方がいい」

少年は美織を見据えて警告する。


……この二人。


「あの、あなた達は一体……あずさ?」

美織はあずさを見上げたが、彼女は相変わらずのあの顔でにこりと笑っただけだった。