「何故、呂依を行かせた!?」
ぐったりとソファーに座っている海に僕はそう怒鳴った。
海は生きているのか死んでいるのかわからないほど、静かだ。
「海、答えろ!」
「……呂依は融通が利かない子だって、わかっていたでしょう?」
口元に虚しい笑みを浮かべた海はそう言った。
「無理だったのよ。あんなに純粋な子、私が触れてはいけなかったの……」
……収まらない怒りは、行動となって現れた。
俺は体中をまとうくらいの大きく黒いマントを羽織った。
その様子を見た海は、死にかけた目を丸くした。
「何をしているの……?」
「呂依を連れ戻す」
呂依が人間の少女に話していたことは、日の昇ったあと、あの場所で会う、という内容だった。
空はだんだんと青くなってきているが、今ならまだ間に合う。
「やめなさい」
「……海も後悔しているんだろう?」
「……やめて」