俺が洋館に帰った頃には、
もうすでに海さんが帰ってきていた。
「赤い月を追いかけてたらしいわね?」
帰ってきた俺を見て、
海さんはそう訊ねた。
俺はただ頷いて、海さんに問う。
「玲さんが、海さんは赤い月が嫌いだって……」
その台詞を聞くと、
海さんは「ああ」と納得したように頷いて言った。
「“嫌い”というよりも“苦手”なの。
ほら、私の目の色みたいだから……」
台詞に続きがあったように聞こえたが、
海さんははっとして口を閉じた。
その台詞の続きを聞きたかったが、海さんはそのまま自室へ戻っていった。