奴がやってくる。

ほぉら、予想的中。
あの走り方は絶対に間違わない。
今日もオレは狼に食い殺される運命にあるから。
それでいいんだ。
オレも、アイツもそれで幸せなんだから。

毎日言い聞かせてたんでケドさ、
まぁ、もう慣れっこって言うか?これはこれでいいっていうか?


オレの名前は兎林 藍瑠(とばやし あいる)。
あだ名は「兎王子」。ごくごく普通の男子中学生…に憧れる、ごくごく稀にしかいない男子中学生。

オレは恋をしている。ずっと昔から一人の人に。

それがアイツ。狼川 美月(ろうがわ みつき)。
あだ名は「狼姫」。世界中探してもきっと見つからないぐらいの、究極のツンデレ女…。オレの、幼なじみ。

では、まず狼姫の前科を紹介しよう。
始まったのは幼稚園の年中の時。
奴は三輪車で階段をきれいにガッガッガッと降りれるのか。という無謀な挑戦を試みた。
というか、その頃から狼姫のモットーは信じれば何でも出来るだったから。
今もなお、そのモットーは崩れていないようだけど。
その挑戦を自分がやればいいのに、狼姫はオレを使って実験した。
結果はモチロン、階段の上から踊り場まで真っ逆さま。
しかも、三輪車を明らかに故意に落とそうとしたのがわかるぐらいに力いっぱい押されたんだから。助かるはずもない。
オレは踊り場でぐったりと倒れていた。そこに親が駆けつけたんだけど、アイツだけはその光景を見てキャッキャキャッキャと、無邪気にハシャいでいたんだ。
そこから地獄は始まった。オレは2年に1回の頻度で骨折している。捻挫なんてもうしょっちゅう。いつもどこかに青あざがある。

では、なぜオレはそんな狼姫が好きなのか。
それは自分にもわからない。