森の中を歩いてると、やがて騒がしい歌声が聞こえてきた。私はなんの迷いもなく、その歌声のほうへと足を向けた。
すると、森の中に一軒の家が建っており、その前でテーブルとイスを並べて何やらパーティーをやっているようだった。
そのパーティーの参加者を見て、私は思わず叫んだ。

「うみ!…ちゃん。」

初対面じゃないものの、話し掛けるのは初めてなので、あからさまにぎこちなくなってしまった。
言われた本人はぽかんと口を開けこっちを見ていたが、やがてハッと気がついたかのようにうなずき、話し始めた。

「私はうみじゃないよ。私は妹のみづき。姉をお探しなら、ここにはいないよ。」

やっと追いついたと思ったのだが、どうやら人違いのようだ。私はみづきに謝り、改めてまわりを見るとおかしなことに気がついた。3人しかいないのにお皿やカップなどが何個も敷き詰めてあるのだ。

「他の方々は…?」

すると、大きなシルクハットを被った男の人が言った。

「いや、僕らだけだよ。どうだい?君も。もうすぐコックが料理も持ってくるよ。」

そう言われて、朝からほとんど飲まず食わずだった私はお言葉に甘えることにした。