「こんなんで足りるのかねぇ。」

確かに、ティーカップに入った紅茶など今の私にとってはほんの一滴のような量だった。大きくなったのなら大きくなったぶんだけ大きい紅茶が必要なのではないか。
だが、ちゃんとその一雫の紅茶を舐めるように飲んだ瞬間に身体に異変を感じ、私は思わず目をつむった。

そして、次に静かに目を開けた時には、景色はもとの部屋の中に戻っていた。
私は大きく、はぁ~、と一息ついて、その場にへたりこんだ。

「いや驚いた。ほんとに普通サイズの女の子だったんだなぁ。」

「あっ、ありがとうございます。えっと…。」

「あぁ、そういや自己紹介がまだだったな。俺の名前は陰山ひろ。」

「私は有栖川るい。おかげで助かりました。」

そう言ってヒロのほうを見ると、なぜか物珍しいものを見るかのように私のことを目をまんまるくして見ていた。

「…?何か?」

「あんたがアリスだったのか。そうかそうか。うみから話は聞いてたんだ。」

「うみから?!どんな?」

とりあえずうみを追いかけているものの、なぜうみを追いかけているのかもわからない今、うみに関する情報が少しでも欲しかった。