♪不思議なチョコレート♪ スイーツコメディ祭参加作品

「あっ・・・。」


私はそのストラップを大事に手にとる。


目の前で揺ら揺らと動かす・・・。


「懐かしいな・・・。」



これは、前に海君とチョコレート博覧会に行った時に買って貰ったもの。


隼人には、海君とデートをした事は未だに内緒。


言ったらきっと『捨てろ!』と放り投げ出されちゃうに違わない。


そんなの可愛そうだものね。




「ふふっ。隼人に内緒で、そっと携帯につけちゃおうかな?」

と、そこに1本の電話。


「あっ、隼人からだ。」


「もしもし?」


「綾乃?今から出れる?

今日の午後の打ち合わせが急にキャンセルになって。

久し振りにデートでもしようか?」


私と隼人は久し振りのデートだった。


隼人は忙しい時間をさいてたまにこうやって電話をしてくる。


隼人ってば優しい♪



「隼人!お待たせ♪」


隼人はマンションの入り口まで迎えに来てくれた。


「綾乃、何処行きたい?」


「うーん、そうだなぁ。」


いつも、私の意見を1番に聞いてくれる隼人。



「じゃあ、チョコレート博物館♪」


「OK。」


何となくあのストラップを見つけたから、

チョコレートに逢いたくなっちゃった。なんてね。


てか、前から行きたいとは思ってたんだけど、行く機会がなかったんだよね。



本当に隼人そんな場所でいいのかなぁ?


まぁ、どうせそんなに長居しないと思うし。まっいいか!



てか、さっきから気になってるんだけど。


隼人・・・?チョコレート博物館の場所知ってるの?!


隼人は私に何も言わずただ車を走らせる。


ん?あれ?ここは、前に海君と待ち合わせした場所?



私が隼人に行こうって話したのは、チョコレート博物館であって、チョコレート博覧会ではないっ!


てか、何でチョコレート博覧会が今日やってるの?!



「行こう!」


えっ?えっ?!


私の手を掴み、子供のように走る隼人・・・。


ん?こんなはしゃぐ隼人見た事ないっ!



「隼人?どうしたの?」


いつもと違うけど?!


「んーーー?」


って、ぎゃああああっ!


急に私の顔に近づける顔・・・。


って・・・?



「海君???」


「そうだよ?」


「隼人は?」


「兄さん?兄さんは・・・あそこ!」



えっ?私は海君が指す方を見てみる。


博覧会の前でお兄さんが風船を配っている・・・その風船!



隼人の顔が沢山ーーー?!


「綾乃~!海から離れろ~!」


その風船が私に向かって飛んでくる。



「ぎゃああああ!」



私は勢い余って石につまづく。


「綾乃ぉ~。海から離れろぉ~!」



「いやぁ!来ないでぇ!海君とは離れるからぁ!」



「綾乃?綾乃?」


「いやぁっ!」


私はびっくりして飛び起きる。



ん?ここ何処?


私は辺りを見回す。


車の中?


って、横に隼人の風船オバケが!



「オバケやだぁ!」



私は隼人の顔にかばんをぶつける。



「おい、痛いんだけど・・・。」



えっ・・・?



「てか、俺はオバケじゃないっ!俺の顔をちゃんと見てみろ!」



はっ・・・?


私は瞑った瞳を、恐る恐る開けてみる。



「はて?」私は首をかしげる。


あれ?普通の隼人?



「はぁ・・・。」と大きな溜息をつく隼人。



「お前何の夢見てたんだよ・・・。」



ん?夢?


「で、俺は何処へ向かえばいいんだ?」



車の外を見回すと・・・あれ?待ち合わせ場所から動いてない?



「お前、車に乗ったとたんに寝るなよ!」


ちょっと怒り気味の隼人。



「こっちはせっかく時間を見付けて逢いにきたのに!」



ん?これは夢?。てか、車に乗るなり私すぐに寝ちゃったの?!


たしかに、昨日隼人は仕事が忙しくて帰ってこなかったから、

夜中も部屋の片付けをしてたけど・・・。



それにしても、車に乗ってすぐ寝た私って・・・。


あはは・・・ありえない。


てか、なんて夢だったの?!